第44回 創作テレビドラマ大賞 「星とレモンの部屋」NHK

この宇宙にひとりでも生きていける星があったらいきたいですか。最初のつかみが強い。さわやかな題名と、あけてみた中身には、かなりギャップがある。どちらかと言えば重いテーマ。

ヒキコモリの人達の立場にたってタンタンと描かれた世界が、凡庸普通なひとには初めての感じ。他の人から見たら理解できないような小さなことでも、誰かにとってははてしなく難しく遠いということがあるんだろうな。悲しい事件にも限られた対応しかできない自分に苦しみ、一風変わってるが精一杯の自分の中からのチカラで突破口を作った主人公。なんともやるせないけど、これはこれで一歩前進にちがいないんだと噛み締めるラスト。ココロのなかのお母さんとの会話が、彼女のなかに生まれていた、一歩ふみだしたいほうの自分だったように思う。たしかに…星とレモンの部屋だった!どこからでも、何度目でも、スタートラインはかける!

そういえば、ふと、久しぶりに梶井基次郎の名作「檸檬」を思い出した。黙ってそこにいるレモンのもつ魔法的なチカラが原動力。放送タイミングは春で正解、密閉された夜に穴があき朝が春が風がきたと願う。

最終回完了 個人的好み判定 〇天国と地獄~サイコな2人~ 普通

綾瀬はるかさんを知り尽くす脚本家、森下佳子さんのチャレンジ。正直予想できなかった着地で最終回完了、盛り上げげ上手。日曜夜に家族と観るドラマとしては正直どうかなとは思うが、入れ替わり2回?3回?普通に面白かった。

個人的には綾瀬はるかと高橋一生の組み合わせは絵的に最後までピンと来なかったが(笑)ふたりの間に共犯感というか、特別な友情?愛情?信頼感?が生まれていくのをみるのは楽しかった!続編もありうる予感を残した最終シーン(∩´﹏`∩)ゾク~~~✨

PanasonicのCMの綾瀬はるかの「すごいわね!?」のイントネーションに似たセリフがあり、にんまり♬︎何だかんだで理解者になってたセクハラ(北村一輝)の凄み演技と、最後まで献身的で悟ったリクが素敵。

最高だったのは曲、手嶌葵さん「ただいま」。単体としても高い物語性ある曲、それを癒しの周波数のか細い美声で。曲だけじっくり聞いてうっかり涙が(T ^ T)ココ危険→「一人で生きて いけるそぶりが うまくなるのが 嫌になります」「だれもしらない 弱い私は いつかだれかに 出会うでしょうか」

最終回完了 個人的好み判定 ✕君と世界が終わる日に ヘイト的要素をエンタメビジネス化し安易で危険

たぶん最近のゲームやアニメでは人を簡単に撃ち殺したり食べたりするような狂気をあたりまえ風に扱うものがあって、そのサブリミナルというか、たとえ非現実とわかりながらでもそういうものに触れ頭の中に格納してしまうことは危険だと私は思ってきたから、なるべく接点をもたないようにしてきた。テレビドラマは、子供や青少年がチャンネルを回すことがあることを踏まえ、一定の線引きがあり、あんまりなものはこれまでも避ける努力があったように思う。

このドラマは、最後まで見て、上記のような過激なシーンが多い点を1度横に置けば、やりたかったであろう狙いがあることはなんとなくは理解できた。愛と正気、疑いや誤解から人間同士の憎しみあいほど怖く破壊的なものはないこと、信じ抜く主人公ふたりが知らぬうちに敵対していたり、ドラマチックな大きめなスケールの話は作り手には面白かったと思う。また、コロナで不安な時代だからこそ、激しめのロックで頭を空っぽにしたい感じで、シューティングゲームのように視聴者をスカッとさせる?効果を狙ったのかもしれない。展開自体はよく出来ているため、次の話も見たくなるし、Huruでシーズン2につなげた点もうまい。

が、しかし。初回の感想に書いたとおり、ウィルスに感染した人達が次々にふえ、その人達をゾンビ風に描き、まだ生きている人間の敵として扱い、あらゆる武器で毎回撃ち殺すという構図は、正直センスを疑う。初回から最終回まで、主人公のまわりだけ美談、正義、勇気の様相で演出しているのだが、正義をかざしやっつけられる人達は悪人でもなくウィルスにかかり死んでゾンビになってしまった人達なのだ。自分が生き残るためになにをすべきか、何が正義かわからなくなる今の悩みは理解はできるが、しかしやっていいことと悪いことがある。やっていいことにも限界限度がある。簡単に切り捨てて良い扱いを映像の形で多数の視聴者の深層心理に植え込んだことは、とてつもなく罪深い。もちろん登場人物達も悩みながら撃ち殺すシーンもなくはないのだが、何人のエキストラが感染しゾンビ風に登場し倒れていったろう。ゲームみたいに簡単に次々と。やっていることはヘイト助長に近い、と私は感じた。危険だ。

平時でも嫌悪感があるが、いまコロナで世界中が悩み悲しみ戦っている最中に何故こんな描き方しかできなかったか。有料のチャンネルならまだしも、地上波のメジャーチャンネルで、善悪を学ぶ前後の多感な青少年達になにを見せたかったのか。エンタメとして視聴率が取れればそれでよいのか。安易だ。視聴者の良識も問われる。こういったものが、テレビ局側で取捨選択されないならば、今後大人は判断し子供にみせるものを選ばなければならない。

(鬼滅の刃と少し類似構造がなくはないが、このドラマは①人の形をしたまま撃ち殺される点、②実写である点、③被害者ゾンビたちそれぞれの背景に心寄せることもなくその他大勢として大量に殺害処理する点が大きく異なる。似たように思える人もいるのかもしれないが、鬼滅の刃には確固たるメッセージの軸があり、それゆえ戦う両者のどちらを正義ともあえて置かず、成敗時は主人公が心を寄り添わせもとの人間の記憶を呼び戻し成仏させる形をとっており、ただ自分が生き延びるための無名の射撃対象と切り捨てていく本作とは本質が全く違う。)